医学勉強合間のメモ

ただのメモです。医師です。詳しい情報まで見たい方には向きません。

2020-01-01から1年間の記事一覧

Bland-White-Garland症候群についてコンパクトに概説

病態 先天的に左冠動脈が、肺動脈から起始する疾患です。通常、左・右冠動脈は両方とも大動脈から起こり心筋を栄養しますが、本疾患では、酸素飽和度の低い肺動脈から左冠動脈が分枝するため、左冠動脈に栄養される前壁や側壁で虚血が起こり、虚血性心筋症様…

家族性アミロイドポリニューロパチーの病態・診断・治療について概説

病態 トランスサイレチンと呼ばれる肝臓で生成されるタンパク質の遺伝子異常により、変異トランスサイレチンが合成され、それらが重合して形成されたアミロイドタンパク質が全身の神経や臓器に蓄積して、神経・臓器障害が起こる疾患です。常染色体優性遺伝の…

麻疹の病態について分かりやすく概説。風疹との鑑別方法も

麻疹とは ・麻疹ウイルスが空気感染することによって生じる疾患。 ・感染から2週間の潜伏期を経て、発熱、咳嗽、発疹が生じる。 発熱は二峰性(発熱後一旦解熱し、再び発熱する)である。一度目の発熱でkoplik斑が口腔粘膜に生じる。2回目の発熱で全身に皮疹…

風疹の病態・所見・治療についてわかりやすく概説

病態 風疹ウイルスによる感染症です。飛沫感染により、5~15才に好発します。発熱、発熱と同時に生じる全身の発疹、リンパ節の腫脹(頸部、後頭部、耳介後部)が起こります。発疹は、発熱と同時に生じること、落屑や融合、色素沈着を呈さないのがが特徴的で、…

X連鎖(Bruton型)無ガンマグロブリン血症の病態・所見・治療について概説

X連鎖無ガンマグロブリン血症について概説して医きます。 病態 伴性劣性遺伝による遺伝性疾患。液性免疫の異常によって、免疫グロブリン(抗体)を産生出来ず、免疫不全を呈する遺伝性の疾患 乳児は母っから胎盤を通してもらった抗体を生まれつき持っている…

大動脈弁閉鎖不全症の聴診所見についてわかりやすく解説

はじめに 弁膜症で起こる異常心雑音、なかなか理解しづらいポイントだと思います。今回は、大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉で生じる異常な聴診所見についてできるだけ分かりやすく説明してみます。 結論から言うと、聴取される心音は、 ・拡張期灌水様雑音@胸骨左…

球脊髄性筋萎縮症(SBMA)の病態・検査所見・治療を概説

病態 身体所見 下位運動ニューロン障害による症状 球麻痺症状 他の症状 検査所見 血液検査 遺伝子検査 治療 病態 遺伝子異常(伴性劣性遺伝)により、アンドロゲン受容体タンパク質のポリグルタミンと呼ばれる部分が長くなる異常(CAGリピートと呼ばれます。…

突発性発疹の病態、検査、治療について概説

病態 乳児期後半にヘルペスウイルス6、7型に感染することで、発熱とともに発疹が全身に出現する病気です。 身体所見 38〜39°Cの発熱が起こります。高熱にもかかわらず、機嫌が良いことが特徴のようです。 解熱後に、全身に発疹が出現します。発疹は発熱が治…

胎便吸引症候群の病態、検査、治療を概説

病態 胎便吸引症候群を疑う所見 検査所見 治療 病態 胎便吸引症候群(MAS)は、胎児が出生前に子宮内で胎便を排泄し、飲み込んで期間に詰まらせてしまう病態のことです。胎内で臍帯によって血液が送られているときは問題ありませんが、出生後、自発的な呼吸…

川崎病の治療方法についてのまとめ

川崎病の治療目的 治療方法 大量免疫グロブリン療法 抗血小板療法 川崎病は、別名『小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群』と呼ばれる、川崎富作博士によって発見された病気です。名前の通り、小児に発熱や皮膚・粘膜・リンパ節病変が急に発症します。 今回は…

ノロウイルス・ロタウイルスそれぞれについて分かりやすく解説

急性胃腸炎は、ウイルスの感染により主に下痢をきたす疾患です。ウイルスによっては嘔吐も出現します。 急性胃腸炎の原因ウルスとして最も頻度が高いのは、ノロウイルスとロタウイルスです。今回はこの2つのウイルスそれぞれについて説明します。 ノロウイル…

先端巨大症の病態、症状、所見や治療についてわかりやすく解説

先端巨大症は、成長ホルモン(GH)を産生する下垂体腺腫によって引き起こされる疾患です。ホルモンの持つ多彩な作用により、多くの症状、所見が出現するのが内分泌疾患の難しいところですが、先端巨大症の患者においても同様に多くの症状、所見が出現します。…

チアノーゼの病態と鑑別

チアノーゼとは、血中の還元ヘモグロビンや異常ヘモグロビンの増加により、皮膚や粘膜が青紫色になることを言います。 チアノーゼは、毛細血管中の還元型ヘモグロビンが5g/dL以上で生じます。 ここで気をつけたいことは、チアノーゼは還元型ヘモグロビンの量…

限局性前立腺癌に対する治療選択・治療効果についてまとめました。初学者向け

限局性前立腺癌の治療選択・治療効果についてのまとめ 限局性前立腺癌に対する治療は、以前は比較的進行の遅いおとなしい癌だと認識されていましたが、近年、進行が速い高悪性度の癌もあることが明らかになってきました。一口に限局性前立腺癌といえども、そ…

分かりづらい蓄尿、排尿のメカニズム(神経機構)を分かりやすく説明

蓄尿、排尿を支配する神経機構について説明 目次 蓄尿、排尿を支配する神経機構について説明 蓄尿、排尿に関わる神経の全体図 蓄尿期 排尿期 まとめ 個人的に苦手なところだったんですよね。 蓄尿、排尿に関わる機構は、登場人物(中枢神経上の核とか)が多い…

尿路造影

最近泌尿器科勉強してるので簡単にまとめますかね。 細かいことはネット上にたくさん上がってるのでコンパクトに。 尿路造影とは、造影剤を用いて腎〜尿道までを観察する検査のことです。 以下のものがあります 1,静脈性腎盂造影 2,逆行性腎盂造影 3,順行性…

癌へのFDG PETの適応

癌や炎症性疾患、心疾患の診断に有用なPET検査。 癌の検査について勉強していたら、PETで診断をつけやすいものとつけにくいものがあるんですね。 それについて書こうと思います。 PET検査の適応(PET CTは割愛)は以下の通り。 1てんかん 2心疾患 3悪性腫瘍(胃…

ブログの今後の行い方

医学ノート、という題名をつけたので、医学のことについて書き続けてきましたが、今後は少し方向転換をしようと思います。 医学のテーマについて書き続けるのは、少し性に合わないというか、文章を書く楽しさをマックスに引き出せないなぁ、というような気が…

呼吸数測定、点滴の投与速度調整に心拍数を利用する方法!時計を使わなくて良いので、手間省けて楽!!

心拍数を参考にした呼吸数の測定の仕方 心拍数を参考に点滴の投与速度を調整する方法 終わりに 今回紹介するのは、呼吸数測定と、点滴の投与速度調整を時計を使わずに行う方法です! それは、心拍数のモニタ音を聞きながら行うやり方です。呼吸数測定も、点…

超簡単! 輸液量計算、投与速度決定の方法と自動計算ツール

超簡単な輸液量の計算方法 4:2:1ルール 投与速度の決定方法 超簡単な輸液量の計算方法 超簡単な輸液の計算の仕方を学んだのでメモがてら紹介します! その名も4:2:1ルール!! 維持輸液量の決定に使えます。 4:2:1ルール 4×(10kgまでの体重)+[2×(10〜20…

麻酔が癌患者の長期予後に与える影響について

とても衝撃的な内容だった。医学部で5年間医学を学んできたが、まさか麻酔が癌患者の予後に影響を与えるとは思いもしなかった。 実習でその事実を、大学の医師から教わり、衝撃を受け、検索したら以下の文献が見つかった。 長期予後を考えた麻酔・周術期管理…

麻酔の概説~全身麻酔編~ カンタンに

麻酔とは 全身麻酔 麻酔薬 鎮痛薬 筋弛緩薬 全身麻酔の組み立て方 麻酔とは 薬剤を使用することで、痛みをはじめとした感覚、意識をなくすことをいう。手術時や強い疼痛を感じる状況で用いられる。 部分麻酔と全身麻酔に分けられる。前者は患者の意識は残る…

成人still病の治療 まとめ

はじめに 治療 最後にちょっとメモ はじめに 治療 最後にちょっとメモ はじめに 成人still病とは、16歳以上の成人で不明熱をきたす代表的疾患の一つです。若年性特発性関節炎の全身型(still病)に類似した病態を呈します。 不明熱は、 ・3週以上の発熱 ・38度…

強皮症の治療を簡単に

強皮症とは 治療 感想 強皮症とは 治療選択 強皮症とは 全身性の結合組織疾患。自己免疫異常による血管障害と繊維化により、結合組織に硬化性病変がきたされる。全身の結合組織で効果が起きるため、症状は多岐にわたる。 治療 強皮症に対して、副腎皮質ステ…