医学勉強合間のメモ

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限局性前立腺癌に対する治療選択・治療効果についてまとめました。初学者向け

限局性前立腺癌の治療選択・治療効果についてのまとめ

 限局性前立腺癌に対する治療は、以前は比較的進行の遅いおとなしい癌だと認識されていましたが、近年、進行が速い高悪性度の癌もあることが明らかになってきました。一口に限局性前立腺癌といえども、それらの特徴を見極めて治療方法を選択する必要があるわけです。

 また、主に治療方法には手術と放射線療法がありますが、近年の治療機器の開発・改良で、放射線治療における選択肢は広がってきました。

 限局性前立腺癌の基本的知識をまとめたうえで、治療選択の方法、各治療について紹介し、各治療の効果を比較していきます。 

 

限局性前立腺癌について

定義

限局性前立腺癌は、前立腺内に留まっている癌のことで、周辺組織・リンパ節へ進展しているものや骨や肺に遠隔転移しているものは含みません。ABC分類において病気A~B、TNM分類において、病期T1a~T2cに該当します。

ABC分類

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(引用元:弘前大学泌尿器科における
前立腺癌の診断と治療http://www.med.hirosaki-u.ac.jp/~uro/docs/about/index/Prostate_Cancer_InfoHP.pdf

上記はABC分類を示した図です。ABC分類において、限局性前立腺癌が該当するA,B期は以下のように定義されています。

A期前立腺肥大症の手術標本などで、偶発的に発見されるもの

A1:限局性かつ高分化

A2:複数の病巣がある、もしくは低分化~中分化

B期前立腺内に限局するもの

B0期:触診では触れないが、PSA高値のため実施された生検で診断されるもの

B1期:片葉内単発のもの

B2期:片葉全体、もしくは両葉にひろがるもの

 

TNM分類

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(引用元:限局性前立腺癌のリスク分類http://www.uro.med.tohoku.ac.jp/patient_info/ic/p_c_04.html

T1(a~b)期:前立腺肥大症の手術標本などで、偶発的に発見されるもの

T1a期:切除標本の5%以下

T1b期:切除標本の5%を超える

T1c期:触診では触れないが、PSA高値のため実施された生検で診断されるもの(上述のB0期に相当)

T2(a~b)期:前立腺内に限局するもの

T2a期:片葉1/2以内のもの

T2b期:片葉1/2を超えるもの

T2c期:両葉への進展があるもの

 

限局性前立腺癌の治療方法・選択の仕方

前述のとおり、前立腺癌の中には進行が遅い低悪性度の癌と、進行の早い高悪性度の癌があります。『前立腺癌診療ガイドライン』上のリスク分類に基づいて、悪性度を見極め、患者さんの状態も考慮しながら、治療が決定されます。

リスク分類

治療方法の選択を行う上で、リスク分類をすることが重要です。①PSA値、②Gleason score、③T-病期、に基づいて分類します。

前立腺癌診療ガイドライン2016年版』には、リスク分類の方法として、D'Amico分類とNCCN分類が紹介されています。

 

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(引用元:前立癌診療ガイドライン2016https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/23_prostatic_cancer_2016.pdf

 

これらのリスク分類上での分類や、年齢を考慮して治療方法が決定されます。

治療⓵PSA監視療法

 いずれ手術や放射線療法を行う前提で、3~6か月に一度のPSA値測定や、直腸診、再生検を並行して様子を見る方法です。

 前立腺癌の中には、悪性度が低く、進行が遅いため生涯にわたって影響を及ぼさない癌もあるため、不要な侵襲的治療を避けるうえで重要な選択肢となっています。

ガイドライン上では、

・PSA≦10ng/mL

・臨床病期≦pT2

・陽性コア数≦2本

・Gleason score≦6

・PSA濃度(PSAD)が0.2未満もしくは0.15ng/mL/mL

を満たすものが適応とされています。【推奨グレードB】

低リスク群の基準よりもさらに厳しい基準となっています。

治療⓶前立腺全摘術(手術)

 前立腺癌に対する治療で、前立腺と精嚢腺、骨盤内リンパ節を摘出する術式です。本治療は、RCTにおいて、全生存率と癌特異的生存率の改善が示された唯一の根治的治療になります。

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(引用元:前立腺全摘術についてhttp://www.kameda.com/files/kameda_portal/patient/topic/man/files/prostate_cancer_01_02.pdf

上の図の点線で囲まれた領域を摘除します。

合併症として、周術期の合併症やED、尿失禁などが起こり得るため、患者への十分な情報提供をしたうえで、意思決定がなされなければなりません。

 適応は、ガイドラインによると

・期待余命が10年以上の低~中間リスク限局性前立腺癌症例【推奨グレードA】

・高リスク限局性前立腺癌【推奨グレードB】

となっています。

治療⓷放射線療法

放射線療法には、外照射と内照射があります。内照射は、永久挿入密封小線源療法と高線量率組織内照射があり、本邦では、主に前者が用いられています。限局性前立腺癌(T1~T2)に対しては、どちらも手術療法と同程度の成績が得られています。

永久挿入密封小線源療法

本治療はヨウ素125が挿入されたチタニウムのカプセルを、会陰から前立腺に向けて針で刺入し、前立腺癌を治療する方法です。

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(引用元:前立腺がんの密封小線源永久挿入治療https://shkt-urology.jp/brachytherapy/

適応は、前立腺内に限局している例(T1~T2)に限られます。

高線量率組織内照射

 高線量率組織内照射は、前立腺に針を刺入し、一時的に線源を通して放射線を照射する方法です。被膜外浸潤部位、膀胱頸部、精嚢まで照射することができます。

 本治療は外照射と組み合わせて行うことが多いです。

 ガイドラインによると、適応は低~中リスク症例が良いとする考え方と、中~高リスク症例までとする2つに分かれます。

外部照射

根治的照射や姑息的照射、再発などに幅広く適応できる治療方法です。以前は、合併症の出現率が高い治療法でしたが、3次元原体照射療法、強度変調放射線照射療法、などの技術の進歩により、より安全に、癌を制御することができるようになっています。