大動脈弁閉鎖不全症の聴診所見についてわかりやすく解説
はじめに
弁膜症で起こる異常心雑音、なかなか理解しづらいポイントだと思います。今回は、大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉で生じる異常な聴診所見についてできるだけ分かりやすく説明してみます。
結論から言うと、聴取される心音は、
・拡張期灌水様雑音@胸骨左縁第3肋間
・収縮期駆出性雑音@胸骨右縁第2肋間
・Ⅲ、Ⅳ音
・僧帽弁狭窄症様の拡張期ランブル
です!
それぞれについて見て行きましょう。
拡張期灌水様雑音
これは最も分かりやすいと思います。大動脈弁での逆流が生じるので、心室が収縮して拡張したあと、逆流が起こるため生じます。大動脈から心室内へ下降性に流れが生じるので、聴取される部位は胸骨左縁の第3肋間と低めの位置で聴取されます。
収縮期駆出性雑音
送り出した血液が逆流して心室内に戻ってくるので、相対的大動脈弁狭窄症が生じます。そのため、大動脈弁狭窄症と同様の所見である、収縮期駆出性雑音が胸骨右縁第2肋間に聴取されます。
ちなみに、拡張期灌水様雑音と収縮期駆出性雑音を合わせて、to and fro雑音と呼びます。行くとき(to)も来るとき(from)も音が聞こえる、という意味なのだそうです。fromのmは省略されています。
Ⅲ、Ⅳ音
動脈血が逆流することで、心室内の動脈血量が増加します。これによって、拡張期に心房が収縮すると、用量負荷と容圧負荷両方がかかり、Ⅲ、Ⅳが生じます。
拡張期ランブル
これは、拡張期に動脈血が大動脈ないから左心室内へ逆流する際に、隣接する僧帽弁を圧迫し、僧帽弁の開放が妨げられることで、聞かれます。
以上が大動脈弁逆流症で聞かれる心雑音になります。少しでも、理解の助けになれれば幸いです。