先端巨大症の病態、症状、所見や治療についてわかりやすく解説
先端巨大症は、成長ホルモン(GH)を産生する下垂体腺腫によって引き起こされる疾患です。ホルモンの持つ多彩な作用により、多くの症状、所見が出現するのが内分泌疾患の難しいところですが、先端巨大症の患者においても同様に多くの症状、所見が出現します。成長ホルモンが持つ種々の作用を意識し、その過剰作用によって引き起こされる疾患であることを意識すると、わかりやすいと思います。
病態・ 症状
先端巨大症のほとんどは、下垂体腺腫によって引き起こされます。これにより、
1、腫瘍による圧迫症状
2、GH過剰分泌
3、プロラクチン過剰分泌
による症状が出現します。
1,圧迫症状
・両耳側半盲
主に、頭痛、視交叉圧迫による両耳側半盲が起こります。
2,GH過剰分泌
GHの過剰な作用により以下の所見が生じます。GHは組織を肥大させる作用を持ちますが、それだけでなく、それそのものに別の作用や、他の生理活性物への作用を持っていることも重要です。
2-1,骨・軟部組織の肥大化
以下のようなものが挙げられます。
・顔面:眉弓部の突出、鼻・口唇の肥大、下顎の突出
・四肢:容積の肥大、四肢末端骨のカリフラワー葉所見(X線)、足底部軟部組肥厚
などです。
顔のパーツが大きくなり、手足が大きくなるイメージですね。ジャイアント馬場さんはこの疾患だったといわれています。
2-2,他
2-2-1尿細管への作用
・尿管結石
GHは尿細管からのカルシウム再吸収を抑制する作用を持つため、その過剰作用により、尿管結石が起こります。
2-2-2活性化ビタミンD促進作用
・血中リン上昇
活性化ビタミンDの作用を促進するため、血中リンが上昇します。しかしその一方で、尿細管からのカルシウム再吸収は抑制するため、活性化ビタミンDが血中カルシウム上昇作用を持つにもかかわらず、血中カルシウムは上昇しません。
3,プロラクチン過剰
・勃起不全(男性)
・月経異常(女性)
・乳汁漏出
GHとは別に、プロラクチンが上昇することもあります。その場合、それにより上記の症状が生じます。
検査所見
血液検査
・血中GH上昇(日内変動消失)
・血中リン上昇
頭部単純X線所見
・トルコ鞍拡大
頭部CT・MRI
・下垂体部の腫瘍
75g経口ブドウ糖負荷試験
・GH上昇
通常、血中グルコース値の上昇は、GHを低下させる方向に働くが、下垂体腺腫の患者においては、GHが上昇する。
L-DOPA,ブロモクリプチン負荷試験
・GH低下
L-DOPAはドパミン前駆体であり、ブロモクリプチンはドパミン作動薬のことである。通常なら、これらはGH上昇方向に働くが、下垂体腺腫の患者においては、GHと同様に逆方向、ここではGH低下作用を発揮する。この作用は、治療薬として、ドパミン作動薬が使用される原理となっている。
TRH試験/GnRH試験
・GH上昇(奇異性上昇)
正常なら、GHの分泌に影響しないTRH,GnRHによる刺激でGHが上昇する。
治療
手術
鼻腔を介して下垂体腺腫を摘除する経蝶形骨洞手術、前頭開頭法による手術が行われる。
薬物療法
・ドパミン作動薬(カベルゴリン、ブロモクリプチン)
・ソマトスタチン誘導体(オトクレオチド)
ドパミンによりGH値が低下する作用を利用し、ドパミン作動薬が投与される。また、ソマトスタチンは本疾患においてもGHを低下させる作用を持つので、ソマトスタチン誘導体が投与される。
放射線療法
術後の再発予防、再発例や手術が不可能な例に対して行われる。