家族性アミロイドポリニューロパチーの病態・診断・治療について概説
病態
トランスサイレチンと呼ばれる肝臓で生成されるタンパク質の遺伝子異常により、変異トランスサイレチンが合成され、それらが重合して形成されたアミロイドタンパク質が全身の神経や臓器に蓄積して、神経・臓器障害が起こる疾患です。常染色体優性遺伝の遺伝形式をとります。
症状は、主に、自律神経症状と末梢神経障害による感覚障害が出現します。
自律神経症状:反復する下痢と便秘、起立性低血圧、発汗異常、陰萎(インポテンス)などが出現する。
末梢神経障害:病初期から温痛覚障害が出現する(触覚障害はない)。進行に連れて、遠位筋の萎縮、腱反射消失が出現する。
診断
神経生検:Congo-red染色でアミロイドタンパク質の沈着を証明する。
血液検査:血中変異トランスサイレチンの存在を確認する。
治療
トランスサイレチン四量体安定化薬(タファミジス)の投与や、根本的治療として肝移植を行う。
麻疹の病態について分かりやすく概説。風疹との鑑別方法も
麻疹とは
・麻疹ウイルスが空気感染することによって生じる疾患。
・感染から2週間の潜伏期を経て、発熱、咳嗽、発疹が生じる。
発熱は二峰性(発熱後一旦解熱し、再び発熱する)である。一度目の発熱でkoplik斑が口腔粘膜に生じる。2回目の発熱で全身に皮疹が出現する。
風疹との鑑別方法
麻疹の皮疹は、融合傾向があり、落屑を伴い、色素沈着が生じることが特徴的である。これらの特徴は発疹を生じる別の疾患である風疹にはないもので、鑑別のポイントとなる。
以下は風疹について書いた記事です。 麻疹との違いを確認ください。
合併症
・中耳炎
・喉頭炎
・肺炎
・亜急性硬化性全脳炎
などを合併症として来す可能性がある。
治療
解熱剤(アセトアミノフェンなど)による対症療法が中心となる。
予防
麻疹風疹混合ワクチンとして、2006年からワクチンの接種が義務付けられている。ワクチンの接種で高い予防効果を得られる。
風疹の病態・所見・治療についてわかりやすく概説
病態
風疹ウイルスによる感染症です。飛沫感染により、5~15才に好発します。発熱、発熱と同時に生じる全身の発疹、リンパ節の腫脹(頸部、後頭部、耳介後部)が起こります。発疹は、発熱と同時に生じること、落屑や融合、色素沈着を呈さないのがが特徴的で、麻疹との鑑別点となります。
合併症
免疫性血小板減少性紫斑病が合併することがあります。他に、髄膜炎、稀に脳炎が起こることがあります。
先天性風疹症候群
また、胎児に感染すると様々な合併症が起こります。
・胎児発育不全
・感音難聴
・心房中隔欠損症、動脈管開存症
・血小板減少
・小頭症、小眼球症
・精神発達遅滞
などが起こります。
予後
稀に脳炎が合併した例を除き、基本的に予後は良好です。
学校保健安全法では、発疹が消失するまでの出席停止が義務付けられています。
X連鎖(Bruton型)無ガンマグロブリン血症の病態・所見・治療について概説
X連鎖無ガンマグロブリン血症について概説して医きます。
病態
伴性劣性遺伝による遺伝性疾患。液性免疫の異常によって、免疫グロブリン(抗体)を産生出来ず、免疫不全を呈する遺伝性の疾患
乳児は母っから胎盤を通してもらった抗体を生まれつき持っているが、生後徐々にその抗体数は減っていき、自身で抗体を作るようになる。しかし、本疾患を持っている乳児は、自身で抗体を作ることができないため、母由来の抗体が減少する生後6ヶ月あたりから、病原体に感染しやすくなる。
診断
免疫グロブリンんの低値とB細胞の欠如(フローサイトメトリーで検査できる)を確認する。場合によっては、遺伝子検査が行われることもあるが、必須ではない。
治療
免疫グロブリン補充療法が適応となる。感染が起これば、病原体に応じて抗菌薬を投与する。
大動脈弁閉鎖不全症の聴診所見についてわかりやすく解説
はじめに
弁膜症で起こる異常心雑音、なかなか理解しづらいポイントだと思います。今回は、大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉で生じる異常な聴診所見についてできるだけ分かりやすく説明してみます。
結論から言うと、聴取される心音は、
・拡張期灌水様雑音@胸骨左縁第3肋間
・収縮期駆出性雑音@胸骨右縁第2肋間
・Ⅲ、Ⅳ音
・僧帽弁狭窄症様の拡張期ランブル
です!
それぞれについて見て行きましょう。
拡張期灌水様雑音
これは最も分かりやすいと思います。大動脈弁での逆流が生じるので、心室が収縮して拡張したあと、逆流が起こるため生じます。大動脈から心室内へ下降性に流れが生じるので、聴取される部位は胸骨左縁の第3肋間と低めの位置で聴取されます。
収縮期駆出性雑音
送り出した血液が逆流して心室内に戻ってくるので、相対的大動脈弁狭窄症が生じます。そのため、大動脈弁狭窄症と同様の所見である、収縮期駆出性雑音が胸骨右縁第2肋間に聴取されます。
ちなみに、拡張期灌水様雑音と収縮期駆出性雑音を合わせて、to and fro雑音と呼びます。行くとき(to)も来るとき(from)も音が聞こえる、という意味なのだそうです。fromのmは省略されています。
Ⅲ、Ⅳ音
動脈血が逆流することで、心室内の動脈血量が増加します。これによって、拡張期に心房が収縮すると、用量負荷と容圧負荷両方がかかり、Ⅲ、Ⅳが生じます。
拡張期ランブル
これは、拡張期に動脈血が大動脈ないから左心室内へ逆流する際に、隣接する僧帽弁を圧迫し、僧帽弁の開放が妨げられることで、聞かれます。
以上が大動脈弁逆流症で聞かれる心雑音になります。少しでも、理解の助けになれれば幸いです。
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)の病態・検査所見・治療を概説
病態
遺伝子異常(伴性劣性遺伝)により、アンドロゲン受容体タンパク質のポリグルタミンと呼ばれる部分が長くなる異常(CAGリピートと呼ばれます。)によって引き起こされる疾患です。脊髄の前角が障害されるため、筋力の低下・筋萎縮のほか、アンドロゲン作用が低下することによる性腺機能異常、延髄が障害されることによる球麻痺が生じます。
別名Kennedy-Alter-Sung症候群と呼ばれます。
成人の男性に発症し、緩徐に上述の症状が進行します。
身体所見
下位運動ニューロン障害による症状
筋力低下・筋萎縮が出現します。下位運動ニューロン障害が起こる疾患ですが、近位筋優位に筋障害が起きるのが特徴です。
他、動作時振戦、線維束性収縮が見られます。
球麻痺症状
構音障害(発生ができない、等)、嚥下障害、舌の萎縮が見られます。
他の症状
下肢振動覚低下や、性腺機能異常(女性化乳房,インポテンツ,精巣萎縮),糖尿病,肝機能障害,高血圧症、脂質異常症などさまざまな疾患が起こります。
検査所見
血液検査
血液検査でCKが上昇します。近位筋が優位に障害されることが原因です。
遺伝子検査
遺伝子検査で、CAGリピートの有無を確認することが確定診断となります。
治療
有効な治療はなく、対症療法や、リハビリテーションを中心に行います。
突発性発疹の病態、検査、治療について概説
病態
乳児期後半にヘルペスウイルス6、7型に感染することで、発熱とともに発疹が全身に出現する病気です。
身体所見
38〜39°Cの発熱が起こります。高熱にもかかわらず、機嫌が良いことが特徴のようです。
解熱後に、全身に発疹が出現します。発疹は発熱が治まった後に出るのが特徴です。体幹から始まり、頭頸部、四肢へと広がります。
また、口腔内を診ると、口蓋垂の根元両方に粟粒状(小さいつぶつぶ状)の紅色の斑点が見られます。これは、永山斑と呼ばれます。
検査所見
白血球数は正常とほぼ変わらないのが特徴です。相対的にリンパ球数が上昇します。
治療
抗ウイルス薬は存在しないので、対症療法がメインとなります。
参考文献