バイオ3Dプリンタで作成した人工血管による再生医療が臨床試験開始
- 概要
- 個人的感想
概要
株式会社CYFUSEが作成した人工血管による臨床試験が先月(2019年11月~)開始されたらしい。
この人工血管は、患者から採取された細胞を培養、一定の大きさに達したものを血管の形になるよう剣山に刺して培養することで作成されている。腎不全による血液透析を受ける患者は、自己血管によるシャントや人工血管によるバスキュラーアクセス法により血液の入出口を作成する。自己血管を使えない場合は、人工血管が選択されるが、この場合、感染を起こしやすく、また閉塞しやすいといった問題点がある。
CYFUSEが開発した人工血管は、自己の細胞を用いているため、感染、閉塞の問題点をクリアすることが期待できる。また、自己の血管を採取する必要がないため、負担も少ない。
臨床試験では、被検者の鼠径部などから皮膚を採取し、血管型に培養して作成した人工血管を患者に移植する。
現在は、人工透析シャントに用いるために用いるが、今後の展開として、同社HPには以下のように示されている。
"今後は、重症下肢虚血の血行再建や冠動脈バイパス術や脳血管・小児用血管等の領域拡大に加え、この細胞のみから作製された管状の細胞構造体による機能再建の技術が発展することにより、消化器、泌尿器等の血管以外の領域への適応拡大についても大きな期待が寄せられています。"
(引用元:https://www.cyfusebio.com/product/pipeline/vascular/)
血液透析用シャントとしての用途のみならず、ほかの部位への血管移植、さらには血管にとどまらず、消化管、泌尿器も作成する、ということでしょう。
個人的感想
個人的には、皮膚の細胞から血管を作成できるというのが驚きでした。現在、iPS細胞による再生医療が注目を集めていますが、この技術では遺伝子導入になどによる幹細胞への誘導は行わずに皮膚から人工血管を作成できるということだと思います。ヒトの細胞を培養して細胞塊を作る、ということは古くからある手法ですが、これらをつなぎ合わせるだけで血管が作れるというのは驚きでした。
これから腸管などを作る際は、さまざまな組織を交えて作らないといけないはずなので、さすがにiPS細胞などの幹細胞を用いるか、複数の種類の細胞を用いるということになるのかな、と思います。
将来の展望がとても楽しみです。