医学勉強合間のメモ

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【病理】脈管浸潤判定の手法・意義をわかりやすく解説

癌の病理診断を行う上で、TNM分類は重要ですが、その項目の一つであるリンパ節転移、遠隔転移を起こすリスクを判定するために、脈管浸潤を特殊染色や免疫染色で見ることがあります。

 

 最もよく用いられるヘマトキシリン・エオジン染色では、癌細胞が静脈内、リンパ管内に浸潤していってるか見分けづらいですが、ヴィクトリア・ブルー染色で静脈への、D2-40抗体を用いた免疫染色でリンパ管への癌細胞の浸潤を見やすくすることが可能です。

 D2-40染色は、リンパ管の内皮細胞を染色します。H・E染色のみでは、スライド作成時の人工的な操作により癌胞巣の周囲に空隙が生じている際、また、炎症細胞が高度に浸潤している際はリンパ管との区別をつけがたかったり、リンパ管を同定しがたかったりします。また、癌胞巣周囲に空隙があって、その内腔を管用細胞が覆っている際は内皮細胞との区別が難しくなります。そこで、D2-40染色を用いてリンパ管内皮細胞を染色し、浸潤を見ます。

 

 ヴィクトリア・ブルー染色は弾性繊維を青く染め出すため、動脈、静脈の内弾性版を青く染め出します。

 動脈では明瞭な内弾性板の外側に厚い筋層が、静脈では不明瞭な内弾性版の外側に薄い筋層が確認されるので、判別が可能です。静脈への浸潤があると遠隔転移のリスクが上昇します。

 

 ちなみに、ヴィクトリア・ブルー染色はH・E染色と同じプレパラート上で行えるので、便利です。