せん妄と振戦せん妄の治療の違い
一度勉強してたことなのですが、改めて勉強しなおしてみるとへぇ〜ってなりました。せん妄と振戦せん妄の治療の違いについてです。
せん妄、振戦せん妄とは
せん妄っていうのは、ザックリいうと、疾患や薬物による中毒によって短期間、注意や認識、意識が障害される状態のことです。
原因は、高齢、認知症、アルコール中毒、睡眠薬、手術、電解質異常、、、
など多岐に渡りますが、今回は、ベンゾジアゼピンなどの睡眠薬、がリスクになるっていう事実に注目したいと思います。
一方で、振戦せん妄というのは、アルコール離脱時に見られるせん妄のことを言います。アルコール離脱によって、意識障害、手指振戦、小動物幻視などの症状が引き起こされます。
治療の違い
アルコール離脱以外で引き起こされる、"通常"のせん妄では、治療は、抗精神病薬(ハロペリドール、リスペリドン)が有効です。
一方で、振戦せん妄では、抗精神病薬の他に、VitB1(チアミン)、ベンゾジアゼピンが有効です。
アルコール依存症ではVitB1が欠乏しやすいために、チアミンを投与するのは分かりますが、面白いのは通常のせん妄と違って、ベンゾジアゼピンを投与するところです。通常のせん妄では、ベンゾジアゼピンを含む睡眠薬は発症のリスクになりますが、振戦せん妄では、むしろ治療になるわけです。
これは、アルコールとベンゾジアゼピンが両方ともGABA受容体に作用することと関係しています。
アルコールの作用が途切れると、GABAの作用が低下し、離脱症状が生じますが、ここにベンゾジアゼピンを投与することで、アルコールの代わりにGABA受容体を刺激して、離脱症状を抑えることができるわけです。
ベンゾジアゼピンはせん妄のリスクとなるが、アルコール依存症患者の振戦せん妄への治療となる
ことが面白いなと思いました。