呼吸数測定、点滴の投与速度調整に心拍数を利用する方法!時計を使わなくて良いので、手間省けて楽!!
今回紹介するのは、呼吸数測定と、点滴の投与速度調整を時計を使わずに行う方法です!
それは、心拍数のモニタ音を聞きながら行うやり方です。呼吸数測定も、点滴投与速度調整も、時計を見ながら行うことが多いと思いますが、このとき、目線を行ったり来たりしないといけないので、ちょっとめんどくさくないですか?このちょっとしためんどくささが、心拍数のモニタ音を聞きながら行うことで解消されます。臨床の現場では、思いもしなかった心拍数の使われ方があるのだと知って驚きました。
心拍数を参考にした呼吸数の測定の仕方
原則として、1分あたりの呼吸数は正常値が12〜20回と少ないため、[15秒あたりの回数×4]などとせず、1分間しっかりと計測するべきとされています。
今回は、パッと呼吸数を観察するのに有用な手段として、呼吸数を測る方法を習ったので紹介します。
原則は1分間しっかり測る、ということを踏まえての文章ですのでご容赦ください。
それが心拍数を活用する方法です。
モニターの心拍数が20回鳴る間に何回呼吸するかを測ります。
それに×4です。
心拍数:80の患者さんが、モニターが20回なるうちに4回呼吸したとすると、16回とだせるわけです。
これだけですが、時計やストップウォッチを使わず呼吸数が測れるということに、なるほど!と驚きました。
胸の動きを見ていると時計を見るのは慣れないと難しいので、目は胸郭に、耳はモニターという測り方は良いなと思いました。
心拍数を参考に点滴の投与速度を調整する方法
以下の記事で書きました。
心拍数が何回なる間に何滴落とすか、と考えて調節する方法です。
良ければどうぞ
終わりに
ここで紹介した呼吸数の測定方法は、あくまで参考、として使えば良いのではないかなと思います。
とはいえ、心拍数が思いもしなかった使われ方で活躍していて面白かったです。
紹介した2つを知ったので、メモ程度に書きました。参考になれば幸いです。
超簡単! 輸液量計算、投与速度決定の方法と自動計算ツール
超簡単な輸液量の計算方法
超簡単な輸液の計算の仕方を学んだのでメモがてら紹介します!
その名も4:2:1ルール!!
維持輸液量の決定に使えます。
4:2:1ルール
4×(10kgまでの体重)+[2×(10〜20kgまでの体重)]+[1×(20kg以上の体重)](mL/時)
体重
~10㎏:4ml/kg
10~20kg:2ml/kg
20kg~:1ml/kg
以上の式に従って、体重をぶち込んでいくと、必要な維持液量が出てきます。
やってみましょう
例)体重54kgの場合
4×10 + 2×10 + 1×34 = 94ml/時
式中の赤文字に実際の体重で当てはまる数字をぶち込めばいいわけです。
投与速度の決定方法
どのように投与速度を決定するか、についても面白い方法を学んだので紹介。
ルートから点滴すると、
小児の場合:60滴で1ml
成人の場合:20滴で1ml
の量が滴下されます。
なので、上で練習した例では、94ml/時で点滴を行うとき、
94ml/h×20滴/ml=1,880滴/h
の速度で滴下します。
この時
およそ30滴/min
よって2秒に一滴の計算となりますが、心拍数にあわせて滴下することも可能です。
どういうことかというと、この例でHR=90回/min だったとすると、
90回/min÷30滴/min=3回/滴
つまり心拍数が3回なったら、一滴落ちるように調整してあげればいいわけです。
面白いなと思ったので書きました
以上!
麻酔が癌患者の長期予後に与える影響について
とても衝撃的な内容だった。医学部で5年間医学を学んできたが、まさか麻酔が癌患者の予後に影響を与えるとは思いもしなかった。
実習でその事実を、大学の医師から教わり、衝撃を受け、検索したら以下の文献が見つかった。
長期予後を考えた麻酔・周術期管理-overview- 加藤正明
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/34/3/34_377/_pdf
上の文献は、周術期に投与した薬が患者の長期予後に与える影響について解説している。以下に概要を示す。
周術期の全身性の炎症が遷延することにより合併症の発症率が増加し、予後が悪化すること、炎症により癌の転移が促進されることが述べられている。そして、抗炎症作用をもつ種々の薬剤の投与により合併症の発症率を抑え、癌の転移にも抑制的に働く可能性があることが述べられている。
ここでは、手術による侵襲と麻酔薬の癌免疫への影響について簡潔にまとめておく。
癌を排除する免疫機構として、NK細胞によるものが挙げられるが、
①手術侵襲による神経内分泌反応・全身性炎症反応
②吸入麻酔薬
の三つの要因によってNK細胞が抑制されることが分かっている。
癌細胞は自ら炎症性サイトカインを分泌することでマクロファージを活性化し、癌組織内への血管新生を促進することで増殖を進める。手術期は侵襲により全身性の炎症反応が起こるため、これにより癌の血管新生が促進され、増殖が進行すると考えられているらしい。
また、吸入麻酔薬により免疫が抑制されることが分かっている。
・吸入麻酔薬を吸入したマウスでNK細胞活性値が下がる
・腫瘍肝転移モデルマウスで、セボフルランにより観点に率が上昇する
・セボフルラン、イソフルランによりヒトの末梢リンパ球が早期にアポトーシスを引き起こされる
等ということが分かっている。
モルヒネは、NK細胞の活性を抑え、癌細胞の血管新生を促すことが分かっている。
・マウス乳がんモデルでモルヒネは有意に発がん率を上昇させ、ナロキソンでその作用は拮抗される
・前立腺癌において、術中スフェンタニルが再発率を有意に増加させる
といったことが分かっている。
また、オピオイド、吸入麻酔薬の作用は、局所・区域麻酔の併用で抑制されることが示唆されている。これは、局所・区域麻酔が術中の神経内分泌反応を抑制し、オピオイド・吸入麻酔薬の使用量を減少させるからであると考えられる。
消化器外科の手術において、全身麻酔単独と硬膜外麻酔併用を比較した前向き研究では、両者の術後生存率に有意差は無かった、とされているが、オピオイド、吸入麻酔薬の使用量を低下させる局所・区域麻酔の併用は、いずれにせよ患者にとってデメリットとなることはなく、生存率を延長させる要因でもあるかもしないので、麻酔薬の適切な使用を心がけなければならない。
麻酔の概説~全身麻酔編~ カンタンに
麻酔とは
薬剤を使用することで、痛みをはじめとした感覚、意識をなくすことをいう。手術時や強い疼痛を感じる状況で用いられる。
部分麻酔と全身麻酔に分けられる。前者は患者の意識は残るが、後者は意識を完全に失う。そのため、全身麻酔下では、医療者と患者はコミュニケーションをとることができないため、医師がモニターを観察し、異常の出現の有無を監視し続けなければならな
今回は、全身麻酔について概説する。
全身麻酔
①意識の消失、②無痛、③筋弛緩、④有害反射の消失の4要素を満たす必要がある。
①~③を満たすために、以下の薬剤を使う。それぞれの薬剤は単一の作用を持つのでなく、それぞれが鎮静・鎮痛・筋弛緩の三つの作用を有している。しかし、それぞれの薬剤で最も強い作用は異なるため、3つすべての作用がバランスよく発現するように、これらの薬剤を組み合わせて使うため、“バランス麻酔”と呼ばれる。
④に関しては、薬剤を用いるのではなく、麻酔科医による観察と有害事象への対処が求められる。
麻酔薬
鎮静に用いられる。以下の薬剤がある。
吸入麻酔薬:セボフルラン(最多)、デスフルラン、亜酸化窒素
静脈麻酔薬:プロポフォール
吸入麻酔の中では、セボフルランが最もよく使われる。MAC、血液/ガス分配係数が小さいため導入と覚醒が早く、気道刺激性も少ないので咳を誘発させにくいというメリットがある。
亜酸化窒素は、血液/ガス分配比率が低いので導入と覚醒が速いが、閉鎖腔への移行性を有するため、腸管閉塞、気胸、鼓室形成術では使用禁忌。
デスフルランは、血液/ガス分配比率が最小のため、導入、覚醒が最速。脂肪親和性も低いので、肥満の人に使いやすいという特徴も持つ。しかし、気道刺激性が強いというデメリットを持つ。
プロポフォールは麻酔の維持目的で使用される唯一の静脈麻酔薬である。効果発現が早いため導入剤として有用で、血中半減期も短いため、長時間投与の持続投与も可能であるため、最もよく使用される。
鎮痛薬
モルヒネ、フェンタニル、レミフェンタニルが含まれる。モルヒネは呼吸抑制を引き起こすため、主に他を使う。
レミフェンタニル
最もよくつかわれる。
メリット:長時間使用しても血中半減期(CSHT)が延長しないため、覚醒が速い。
モルヒネの100倍鎮痛効果がある。ナロキソンで拮抗される。
デメリット:長時間の使用でCSHTが延長し、覚醒遅延、術後呼吸抑制が生じる。
術後の硬膜外麻酔に用いられる。
デメリット:副作用として、悪心・嘔吐、便秘、呼吸抑制などが起こる。
筋弛緩薬
脱分極性筋弛緩薬(スキサメトニウム)
唯一スキサメトニウムがある。アセチルコリンの二量体で、筋細胞を脱分極の持続した状態にさせて筋弛緩効果を発揮する。自然に分解されるため、拮抗薬なし。
精神科の電気痙攣療法で用いられる。
非脱分極性筋弛緩薬
アセチルコリン受容体阻害薬である。ロクロニウム、ベクロニウム、パンクロニウムがある。発現は速い。分解されないため、術後、拮抗薬を用いる。
拮抗薬には以下の二つがある
ネオスチグミン:コリンエステラーゼ阻害薬。従来用いられてきた
スガマデクス(ブリディオン):2010年に発売。ロクロニウムと1:1の結合をし、血中ロクロニウム濃度を下げる。濃度勾配で神経接合部からロクロニウムが血中へ移動し、筋弛緩から回復する。
スガマデクスが発売されたことにより、非脱分極性筋弛緩薬ではロクロニウムが格段に使いやすくなった。
全身麻酔の組み立て方
鎮静、鎮痛、筋弛緩のそれぞれの薬剤の選択明確なガイドラインがあるわけではなく、使う医師、施設ごとの慣習や、副作用・臓器機能を考慮して選択される。
鎮静薬においては、静脈麻酔薬と吸入麻酔薬で有用性に差はない。 上記のことを考慮して決める。
鎮痛薬には、上述したオピオイドのほかに、硬膜外麻酔、脊髄クモ膜下麻酔、神経ブロックなどを用いることができる。
筋弛緩薬は、気管挿管時には必要になるが、全身麻酔においても自発呼吸を残すこともあるため、マストではない。使用する場合は、電気経連療法以外は、非脱分極性筋弛緩薬を用いることが多い。
用語
また、よく使用される麻酔の組み合わせには名称がついている。
TIVA:プロポフォール、オピオイドを経静脈的に入れることで、吸入麻酔薬に頼らずに全身麻酔をかけることができる。
AODR:Air+O2+セボフルラン+デスフルラン
更新していきます。
成人still病の治療 まとめ
- はじめに
- 治療
-
最後にちょっとメモ
はじめに
成人still病とは、16歳以上の成人で不明熱をきたす代表的疾患の一つです。若年性特発性関節炎の全身型(still病)に類似した病態を呈します。
不明熱は、
・3週以上の発熱
・38度以上の発熱が数回起こる
・入院検査で原因不明
の条件を満たす熱のことを言います。
そのため、悪性疾患、感染、膠原病が否定された上で、特徴な的な症状から診断をつけなければなりません。
成人発症still病の診断基準は以下の通りで、大項目の2つ以上を含み、かつ合計5つ以上の項目が該当する症例が、成人still病と診断されます。
”成人発症スチル病分類基準
大項目
1.39℃以上の発熱が1週間以上持続
2.関節痛が2週間以上持続
3.定型的皮疹
4.80%以上の好中球増加を伴う白血球増加(10000/ml以上)
小項目
1.咽頭痛
2.リンパ節腫脹または脾腫
3.肝機能異常
4. リウマトイド因子 陰性および抗核抗体陰性
除外項目
I.感染(特に 敗血症 、伝染性単核球症)
II.悪性腫瘍(特に悪性リンパ腫)
III.膠原病(特に 結節 性多発動脈炎、悪性関節リウマチ)”
(引用:難病情報センター 成人スチル病 https://www.nanbyou.or.jp/entry/132)
治療
NSAIDsを投与し、改善がなければ副腎皮質ステロイドを投与する。
また、効果不十分な場合にトシリズマブ(抗IL-6受容体抗体)も適応となる。
以下、医薬品情報。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054586
メトトレキサートなどの抗リウマチ薬の有用性も報告されている。
最後にちょっとメモ
ステロイドが奏功しなかったため、抗IL-6受容体抗体を投与した症例を経験したのでまとめました。
IL-6は肝臓に働きかけ、CRPを上昇させる作用を持つサイトカインですが、トシリズマブ投与によりCRPが急激に下がったのが印象的でした。
ただ、CRPは下がっても、疾患活動性は残存していることもあるため、関節痛の有無、滑膜円の有無などをフォローしなければなりません。
強皮症の治療を簡単に
- 強皮症とは
- 治療選択
強皮症とは
全身性の結合組織疾患。自己免疫異常による血管障害と繊維化により、結合組織に硬化性病変がきたされる。全身の結合組織で効果が起きるため、症状は多岐にわたる。
治療
強皮症に対して、副腎皮質ステロイドの有効性は限定的。
血流障害を悪化させないために寒冷暴露を避ける、手指の拘縮予防としてストレッチを行うなどの生活指導が重要。
また、それぞれの症状に対して、対症療法的に治療を行う。
・肺高血圧症→PGI₂
・間質性肺炎→シクロホスファミド
・腎クリーゼ→ACE阻害薬
感想
強皮症は、自己免疫がかかわる膠原病であるにも関わらず、ステロイドの有用性が限定的であることが特徴的だと思った。RA、SLE、PM/DM、MCTDなどでは、ステロイドは有用な治療の一つ。てっきり強皮症でも効くものかと思ってた。
ただ、皮膚硬化進行期には、有用性が指摘されているため、進行期に中等量で限定的に、というような使い方らしい。
バイオ3Dプリンタで作成した人工血管による再生医療が臨床試験開始
- 概要
- 個人的感想
概要
株式会社CYFUSEが作成した人工血管による臨床試験が先月(2019年11月~)開始されたらしい。
この人工血管は、患者から採取された細胞を培養、一定の大きさに達したものを血管の形になるよう剣山に刺して培養することで作成されている。腎不全による血液透析を受ける患者は、自己血管によるシャントや人工血管によるバスキュラーアクセス法により血液の入出口を作成する。自己血管を使えない場合は、人工血管が選択されるが、この場合、感染を起こしやすく、また閉塞しやすいといった問題点がある。
CYFUSEが開発した人工血管は、自己の細胞を用いているため、感染、閉塞の問題点をクリアすることが期待できる。また、自己の血管を採取する必要がないため、負担も少ない。
臨床試験では、被検者の鼠径部などから皮膚を採取し、血管型に培養して作成した人工血管を患者に移植する。
現在は、人工透析シャントに用いるために用いるが、今後の展開として、同社HPには以下のように示されている。
"今後は、重症下肢虚血の血行再建や冠動脈バイパス術や脳血管・小児用血管等の領域拡大に加え、この細胞のみから作製された管状の細胞構造体による機能再建の技術が発展することにより、消化器、泌尿器等の血管以外の領域への適応拡大についても大きな期待が寄せられています。"
(引用元:https://www.cyfusebio.com/product/pipeline/vascular/)
血液透析用シャントとしての用途のみならず、ほかの部位への血管移植、さらには血管にとどまらず、消化管、泌尿器も作成する、ということでしょう。
個人的感想
個人的には、皮膚の細胞から血管を作成できるというのが驚きでした。現在、iPS細胞による再生医療が注目を集めていますが、この技術では遺伝子導入になどによる幹細胞への誘導は行わずに皮膚から人工血管を作成できるということだと思います。ヒトの細胞を培養して細胞塊を作る、ということは古くからある手法ですが、これらをつなぎ合わせるだけで血管が作れるというのは驚きでした。
これから腸管などを作る際は、さまざまな組織を交えて作らないといけないはずなので、さすがにiPS細胞などの幹細胞を用いるか、複数の種類の細胞を用いるということになるのかな、と思います。
将来の展望がとても楽しみです。